気圧の変化によって自律神経やホルモンに変調があるらしいとの見解は既に知られていますが、現状は専門家であっても「どうも気圧の変化と体調の関係はあるらしい」という曖昧さが多く残る話題です。
個人的には夕立ちや雷雨が多くなる夏の初めから台風が来る秋のあたりまでが辛い症状が出ることが多いのですが、厄介なのが単純に「天気が晴れだから体調がいい、逆に雨だから体調が悪い」という性質のものでもないことです。気圧も「高気圧だから~」、「低気圧だから~」と単純な因果関係を求めることもできないのです。これはあくまで気圧の変化はきっかけであり、絶対的な条件ではなく、自分の副鼻腔の状態との相対的な関係で体調の変化をもたらすものであると推測しています。
敏感な人は新幹線や飛行機に乗ればわかると思いますが、機体の上昇時や下降時に耳の奥が閉じたり、キーンと鳴る時には、必ずしも絶対的なパターンがあるわけではないのと同じかと思います。その時に感じるのはあくまで大まかな傾向を感じる程度でしょう。耳の症状は耳管が閉じたり、鼓膜への影響で比較的わかりやすいのですが、近くには副鼻腔と鼻腔とで同じように狭い連絡路があります。気圧の変化があればそれぞれの副鼻腔へとつながる通り道が閉じてしまうことは十分に考えられるのですが、耳ほどには注意が払われていないのが実情かと思います。(しかも外とつながっている耳と違い、副鼻腔は行き止まりですから一般的な耳抜きをして圧力をかけても効果がないことも難点です。原理上は鼻や口側を陰圧にすればよいはずなのでですが耳との関係もあってなかなかうまくいかないのではないかと思います。)
さて生まれつき副鼻腔の通り道である自然孔が狭かったり、副鼻腔炎が慢性化しているとわずかな気圧の変化によって体調不良が起きることがあります。分類的には航空性副鼻腔炎と同種のメカニズムが働いていると考えられますが、気圧の変化が小さいため強い痛みを感じることは稀で、頭の鈍重感や集中力や意欲の低下、うつ症状などが主な症状と言えます。
こうしたことが起きる理由としては次のように考えられます。まず気圧の変化がきっかけとなり鼻腔と副鼻腔の細く狭い部分が閉じてしまう。そして副鼻腔と鼻口腔とで気圧の圧力差が生まれる。副鼻腔側の圧力が高まれば陽圧、逆に低ければ陰圧となるわけですが、どちらにしても周囲の気圧差によって脳周辺の組織や神経がわずかに圧迫されるわけです。こうした原理でも心身の不調が起きると私は推測しています。また成長期の過程や何らかの問題で副鼻腔の一部が外部と完全に遮断されてしまい、いわゆる死腔となってしまうと気圧の変化による体調不良に恒常的に悩まさされることも推測されます。
きっかけとなる気圧差はせいぜい数hpaレベルですから体の表面に加わる力も数g/cm^2という極めて僅かな圧力にすぎません(単純計算すると1気圧(1013hpa)で約1000g/cm^2の圧力がかかっているわけですから、1hpa気圧が変化すれば約1g/cm^2の圧力変化があるわけですね)。こうした僅かな圧力が本当に心身の影響を与えるのかどうかは未だ確かではありません。ただこうした僅かの圧力だからこそ痛みを感じないのかもしれません。たとえば目を外側から指で押してみてください。痛みを感じるほど強く押せば当然、痛みを感じますが、僅かな力で押すとなんとも言えないうっとおしさや重苦しさを感じることもあるかと思います。(ちなみに一時的なものであればマッサージ効果もあるかと思うのですが長時間押さえつけられていれば悪影響のほうが強くなるかと思います。)もしかしたら副鼻腔の奥側ではこれと同じことが起きているのかもしれません。
痛みを感じる神経は一定以上の力が加わらないと痛みとは認識せずに、ただ触られているだけ、軽く押されているだけと感じるものであることは皆さんも体験していると思います。もっともわずかに触られただけで激痛を感じるのであれば日常生活もままなりませんから、それはそれで理に適った機能ではあります。が、そのわずかな圧迫が脳の神経や組織を圧迫していた場合はどのような結果をもたらしているのか、という点が盲点になっていて、現在研究中の事柄でもあります。
と、ここまで書きましたが具体的なメカニズムについては未だ不明と言ったほうがいいでしょう。ただこうした症状を軽減する対策はあります。
それは耳栓を使うことです。
通常のタイプ、シリコン型、飛行機用など様々な種類がありますので自分にあった耳栓を探してみてください。完治させるわけではありませんが、つらい症状を軽減できると思います。
(なお人によってはそうした頭の鈍重感がある時に耳栓をすると、鈍重感は軽減したものの逆に上顎洞(頬骨の近く)などに痛みを感じることがあります。これは耳を物理的に塞いだことで耳や鼻の中の気圧のかかり方が変化して、上顎洞のほうへより圧力がかかった場合に起きる現象と思われます。こうした現象そのものはわずかな気圧の変化が体調に影響を与えている証拠の一つではあるのですが、わざわざ痛みを我慢するものではありません。耳栓を取ってしまえばそこで内部の気圧はすぐ調整され痛みはすぐになくなります。その後で耳栓を使いたい場合は再び使えばよいでしょう。あまり頭で考えずに、体の感覚を優先して異常を感じたらそれを止めて様子を見るようにしましょう。)
(また、耳栓という構造上の問題で耳を圧迫して痛みを感じたり、耳の中が湿気が多くなるなどの問題もありますので長時間使用できる耳栓はなかなかないのも実情です。痛みを感じにくいのはシリコン製のものですが、遮音性がやや劣るという問題もあります。あくまで対処療法の一つとしてお考えいただければと思います。)